2013年10月31日木曜日

患者さんの気持ちを味わってみます。

多田です。


写真は骨盤骨折の患者さんに使用する「サムスリング」という医療機材です。
骨盤骨折の患者さんは、骨折部からの出血が原因でショックになることがあります。
その際、怪我で開いてしまった骨盤の骨を、この器具でしめることで止血効果が期待できます。
今までは、シーツで行っておりましたが、きちんとした力でしめることができるため、今回救急外来に導入しました。
広島県ドクターヘリには、運航開始から搭載されています。

実際に使用したことのないスタッフから、試してみたいという意見がでて、当日のスタッフで体験してみました。
以前、JATEC(JATECについて?と言う方はこちらをご覧ください。)を受講した際、骨盤のブースで「うひょーーっ」となるぐらいしめてください。とシーツラッピングの締め具合を教えていただきました。
サムスリングには、適切な圧力になった場合、クリック音がして、教えてくれる機能があります。

実際、その圧力までかけてみましたが、確かに「うひょーーっ」となる感じがありました。
(うひょーっとなっているK看護師です)

遊んでいるわけではありません。
医療者は患者さんの気持ちを味わうことも大事ですから。

2013年10月26日土曜日

2013救急医学会総会に参加しました。

多田です。
2013/10/21-10/23まで、東京国際フォーラムで、日本救急医学会総会が開かれました。


全国の救急医が集まる学会で、自分も初日だけ参加させていただきました。
前日入りして、朝から夕方まで「小児」のセッションを聴かせていただきました。
各施設の先生がたが、それぞれの施設でいろんなことを考えながら日々診療しているんだなと感じました。
学会のあとは、千葉北総病院のY先生と「小児救急医療」について熱く語り合い、

(2012/7月 HEM-net研修中の多田とY先生)

その後、遅れて東京入りした、愛知医科大学病院のT先生と「お互いの地域の救急医療」について熱く語り合いました。

(愛知のT先生と)

しっかり「充電」して、広島に帰りました。
これでまた、しばらく頑張って仕事ができそうです。

2013年10月23日水曜日

救命救急センターからみる新生児の迎えヘリ搬送

多田です。

当、県立広島病院の「新生児科」は新生児の迎え搬送を行っている、県内でも数少ない施設です。救急車での迎え搬送だけでなく、消防・防災ヘリを使った迎え搬送も10年以上前から行っています。
(搬送用保育器です)

実は、当院新生児科のOBである自分の、人生発ヘリコプターは新生児の迎え搬送でした。
研修医2年目で、右も左もわからない状態で、上級医と一緒に備北の医療機関へ向かい、日没間際のため急いで活動が必要だったことを今でも思い出します。

(救命救急センターから飛来する広島市消防ヘリが見えます)

先日のHEM-netシンポジウムでは、ドクターヘリのミッションの多様化が各地で行われており、地域医療・周産期医療・小児医療に対する出動も各地で徐々に増えつつあることが報告されました。
広島県はヘリコプターでの新生児迎え搬送の歴史は古く、ドクターヘリ導入に際しても、当然新生児の迎え搬送も考慮しました。しかし、大きなシステムを立ち上げる際に、余計に一手間かかるミッションでしたので、ドクターヘリの運航がこなれてきてから再考することにし、基本的には消防防災ヘリでの出動という位置づけにしました。

(屋上ヘリポートに着陸する広島市消防ヘリです)

しかし、消防・防災ヘリコプターには、運休期間があること、要請から出動までの時間が、ドクターヘリに比べると圧倒的に遅いことなど、ドクターヘリでの迎え搬送のメリットも明らかになってきました。
現在、「ドクターヘリでの新生児迎え搬送」を実現するべく、院内・県内・スタッフ内の調整と、装備品の調整など行っています。

救急も、新生児も知っている人間だからこそ介入できる部分だと思います。


大人も、こどもも、新生児も同じ1人の傷病者です。
平等に広島県ドクターヘリの恩恵を受けられるようになればいいなと思っています。

2013年10月19日土曜日

多田です。

先日、夏休みに自宅で普通に眠っていたところ、どうもはっきりと寝言を言っていたようです。
翌日の朝、妻に「ヘリコプターの夢見てなかった?」と言われて思い出しました。
そういえば、そんな気が・・・

「たき火が多すぎて、ヘリが降りられんじゃないか!」とはっきり話していたそうです。
・・・

「どれだけヘリコプター好きなんだか」とややあきれられてしまいました(笑)。
たき火も意味不明だし。


そんなヘリ好きの救急医が、今日も広島ヘリポートで待機しています。


「天気悪いから飛ばないでしょ。」とか思わず、一度要請してみてください。
意外と出動できたりしますので。
消防のみなさんからの、気軽な要請お待ちしています。

(写真と本文は関係ありません。)

2013年10月16日水曜日

懐かしい場所への出動

多田です。

先日、ドクターヘリ当番日に尾道市消防さんから要請がありました。
自分は、尾道市の島出身ですので(すんでいた時期は、御調郡でしたが・・・)、現場はなじみのある地名です。
ランデブーポイントがCSさんから無線で届きます。

(橋のたもとの公園でした)

なんだか聞いたことがある場所です。たしか・・・
自分が小学校時代に、遠足で行った公園では?。


実際に着陸しましたがやはりそうでした。小学校の遠足以来でした。
患者さんは現場の救急車内で診療させていただき、救急隊の方だけで病院へ搬送していただきました。
(舗装された駐車場に着陸しました)

自分が行ったことのある場所に、ドクターヘリで行くってのはなんだか不思議な感じがします。

2013年10月13日日曜日

平成25年度 第1回救急救命士教育コース

多田です。

先日、「平成25年度 第1回救急救命士教育コース」に参加させていただきました。
自分は変わらず「小児」のブースを担当させていただきました。
(過去の記事はこちらです。)
今回で3回目となり、参加者としても少し慣れてきた部分があり、また運営している救命士さん達もこなれてきて、徐々に中身が濃いものになってきたと思います。

今回の学生さん達(救急救命士さん)は、比較的若い方々が多く、教官の方々はちょっと心配していたみたいですが・・・。

(準備風景です)

シミュレーションを始めてみてびっくりです。
人形相手のシミュレーションですが、実際の患者さんの診察と同じように、丁寧で適切な対応ができています。たくさんの人たちに見られながらの活動ですから、普段の活動以上に緊張するのが普通でしょうが、みなさん普段からしっかりとした活動をしてらっしゃいますので、なにも問題なく活動が進んでいきます

「小児」を「成人」と同様に、1傷病者として扱い、さらに「小児」に対して特別に考えるべきことを考える活動がきちんとなされていて、鳥肌が立つほど感動しました。

また、前回・前々回も行われていた、マザーリング・くらぶの皆さんによる院外分娩の講義・実技も中庭に置かれている救急車内で行われていました。
(当院でも講義をしていただいたマザーリング・くらぶの皆さんの記事はこちらです。)


(みなさん真剣です)

自分はこれからも地道に、「小児」について話していきたいと思います。

2013年10月9日水曜日

フライトドクターひとりぼっちの当番日

多田です。

先日、ドクターヘリ当番日にフライトドクター1名の日がありました。
広島県ドクターヘリは現在のところ、フライトドクター2名、フライトナース1名での運航を基本としております。

9月は救急関係のイベントも多く、また職員の夏休みが集中する季節ですので、ヘリポートで専従のフライトドクターを2名そろえるのは至難の業です。
本来、ドクター1名で運航でも全く問題ありません。

消防・防災ヘリによる「ドクターヘリ的運用」では、医者1人、看護師1人で出動することが多かったのですが、OJTの期間・広島県ドクターヘリスタートしてからの期間をあわせても、ドクター1人で、ドクターヘリに乗るのは初めてでした。

(M看護師とのペアでした)

それに気がついてからなにやらドキドキが納まらなくなってしまい、朝は5:00に目が覚めてしまい。いつもより30分も早く出勤してしまいました(爆)。

(早朝の空模様です)

普段、2フライトドクターでやっている時には、そんなに緊張することはなかったのですが、「自分しかいない。」と思うとこんなに違うとは思っていませんでした。

昨年、NTVで放送された、「リアルワールド」で北総病院のY先生の言っていた、
「怖いですよ。自分しかいないし。心臓止めずに帰って来ないといけないし。」
という言葉が身にしみました。

しかし、2フライトドクターでやっていても、途中ドクター1人で活動しなければいけないこともでてきますので、普段からさらに緊張感を持って活動するべきだなと反省です。

「医者が1人だからいけてなかった」と言われないように頑張ります。

2013年10月5日土曜日

ドクターヘリ机上シミュレーション

多田です。

先日の、プレホスピタルケア研究会に参加させていただきました。
そこで、当初は「ドクターヘリが効果的だった症例」の提示をお願いされ、あれこれ考えておりましたが、正直運航開始4ヶ月では「劇的救命!」というような症例はなかなかありません。

広島県ドクターヘリの運航実績は、広島県のHPに毎月アップされていますが、今のところざっくりとした数字で、1日1件平均の出動です。
しかし、これが本当のニーズを拾い上げられていての1日1件かというと・・・。
そうでもなさそうです。

ヘリポートでは、航空無線の他に、消防無線を聞くことができます。
要請基準に合致するキーワードが出てきていても、要請がないことも・・・。

いろいろ考えました。
結果、「ドクターヘリを呼ぶと面倒なことばっかりが増えて、効果がわかりにくい」のが問題ではないかと。

そこで、いつも現場で患者さんをケアして搬送してくれている、救急救命士さん達に俯瞰した目線でドクターヘリの運航をマネージメントしてもらい、全体の流れからドクターヘリが有効なことを実感していただこうと、エマルゴ的な机上シミュレーションを行いました。


病院前の条件、病院の条件、地理的条件、ドクターヘリ運航条件などを設定し、今回は「時間」の要素に絞ったシミュレーションを行いました。

(以下、スライドの一部です)




自分の予想に反して、救急救命士のみなさんも、他の施設から参加のドクターもみなさん楽しんでいただけたようです。




さらに、この事案2では、自分が想像もしていなかった、
「アナフィラキシーショックの患者さんに救急車2台を使って、患者搬送+医師搬送で接触時間を短縮する」
方法なども話し合われて、自分にとっても大変有意義なシミュレーションとなりました。

コツコツと、病院前医療の効果を宣伝していき、必要な要請件数を増やしていけたらなと思います。

2013年10月3日木曜日

雨のあと

多田です。

そろそろ秋の気配がしっかりな季節になりましたが、今年の夏は暑かったですね。
くわえて、大雨による災害も各地で起きて、たくさんの被害がでました。
被害に遭われた方々の一刻も早い回復を願っています。
自分がドクターヘリ当番日に、島嶼部へ出動後、広島ヘリポートへ帰投する際にふと瀬戸内海をみると・・・
こんな風景が、

(茶色くなってます) 

いつもはきれいな瀬戸内海が濁っています



(普段の瀬戸内海はこんな感じです)

雨が降ったのは数日前なんですが、海への影響ってしばらく残るんですねー。
空から見て初めてわかることでした。

2013年10月1日火曜日

HEM-netシンポジウムに行ってきました。

多田です。

2013/9/26にHEM-netシンポジウム
ドクターヘリ運用の多様化
-地域医療、周産期・小児医療との連携
というタイトルで、東京のHEM-net事務局のあるビルで開催されました。



小児科出身で、新生児医療の経験もあり、僻地医療の経験もある自分が行かないわけにはいかない!と、勝手に思い参加させていただきました。

会場には、HEM-net研修でお世話になった、千葉北総病院の先生方や、長野県立こども病院時代に何度もお話を聞かせていただいていた、成育医療センター・都立小児総合医療センターの先生方がパネリストとして招待されており、懐かしい再会だったり、ドキドキする初めましてだったりをさせていただきました。

シンポジウムでは、地域の地理的事情や、医療事情により運用が多様化されつつある、ドクターヘリの運航スタイルが各シンポジストから発表されました。


関東で行われている、小児重症患者の救命救急センターでの初療→安定化→さらなる高度医療が必要な場合に、都内のPICUへドクターヘリを用いた搬送というモデルが患者さんの予後改善につながったことが報告されました。
ただ、広島県で同じことができるかは・・・
おそらく答えは「NO」だと思います。ただ、救急医療は地場産業ですので、広島県には広島県にあった、重症小児診療のスタイルがあると思います。自分はひたすらそれを模索しながら、実践していきたいと再確認させていただきました。

また、母体搬送・新生児搬送に関しても各県の事情があり、それぞれの県でよりよい医療を目指した取り組みがなされていることがわかりました。
広島県は現在も、消防防災ヘリによるドクターピックアップ方式で、新生児搬送をおこなっておりますが、時間のことを考えるとドクターヘリが使えるようになるとメリットは大きいと思います。今のところ実現できていませんが、成人も妊婦さんも小児も新生児もみんな同じ傷病者ですので、分け隔てなくドクターヘリの効果が発揮されるような体制作りが必要だと再認識しました。

シンポジウムのあと、懇親会・2次会まで参加させていただき、2012/7月のHEM-net研修でお世話になった、千葉北総病院のM教授、M准教授、Y先生。

(千葉北総のY先生)

このブログで大変お世話になっている、前橋赤十字病院のM先生。
千葉北総病院OBで現在、宮崎県ドクターヘリに乗ってらっしゃるK先生。

(宮崎のK先生、群馬のM先生、広島の多田です)

HEM-net理事で、作家のIさん。

(HEM-net理事のIさんです)

自分が北総病院研修中に、病院への電話連絡を聞いて感動した(そのときの話はこちら)、北総救命会の救急救命士の方々。
たくさんの方々とお話しさせていただき、充実した時間を過ごさせていただきました。

またみなさんに元気をもらって広島に帰りました。
これでまたしばらく頑張って仕事できそうです。
お世話になった皆さんありがとうございました。