2014年7月28日月曜日

ベストを尽くした人たち

多田です。

先日、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの幼児が搬送になりました。

消防指令の段階で、「アナフィラキシーショックの幼児例」のため、ドクターヘリ要請されました。残念ながら、運航時間を過ぎてしまっていましたが、そこはいつも気が利いた要請をしてくれるO村指令。
迷うことなく、当院ホットラインを鳴らし、
「救急車2台を使った、ドクターピックアップでのドッキングミッション」へ変更です。
(患者さん接触前に携帯電話で情報収集)

当然、出動OKで、当直医だったT先生と、S先生、K看護師で出動です。
(必要な資機材を準備し、点検してます)

連絡をもらった多田は、自宅から病院へ急行し、消防指令を介してドッキングミッションの救急車両方にお願いし、「画像伝送システム」で現状をリアルタイムで把握します。

患者さんを搬送している救急隊からは、ご家族がエピペン(アドレナリンの自己注射キット)を使用して状態は改善傾向であると連絡があります。

ドッキングした救急車内では、T先生の的確な状態把握と、S先生の迷いのない点滴確保、K看護師の緩みのない点滴固定が行われます。
そして、状態の安定化を確認しつつ当院へ戻ってきます。

救急外来到着時には、症状はほぼ改善しており、あとは経過観察のための入院の準備のみが残された仕事でした。

一歩間違えば、命に関わりかねない状態でしたが、
<消防指令の医者を現場に引っ張り出す姿勢>
<病院前医療を日常的に行っている医療スタッフのフットワーク>
<すれ違わないように、ドッキングを成功させた両救急隊>
関係したメンバーは、ベストを尽くしました。
そして、今回のMVPはやはり
<震える手で、我が子を守るために勇気を持ってエピペンを自己注射したご家族>
です。
関わったすべての人たちが、それぞれ自分のベストを尽くした結果、ご本人は何事もなかったかのように翌日、自宅退院となりました。
元気になって帰って行く患者さんの笑顔は、頑張った我々へのご褒美ですね。

アナフィラキシーショックは、救急医をはじめ、「救急医療システム全体の機動力」が試される、緊急度が非常に高い疾患です。
こんな事は、当たり前のようにできて、記事にもならないような医療を普段から提供して行かなくてはいけません。

2014年7月23日水曜日

自分自身のキャッチコピー

多田です。

当救命救急センターのキャッチコピーは、繰り返しでくどいようですが、
「Turn Back Time」です。
今年度からののスクラブは、バックプリントが一新されました。
そのときの記事は、こちらと、こちらです。

そして、そのキャッチコピーに合わせて、個人用のスクラブも作成しました。
バックプリントは、これです。

自分のスクラブには、左胸に「HPH-ED」
「Hiroshima Prefectural Hospital Emergency Department」の略
(左胸)

右胸にホットライン用PHS用のポケットが、
(右胸)

左の袖口に「Child Life Professional」の文字をいれてもらいました。
(左の袖口です)

「こども達の命を守ることに関して、プロでありたい」という自分の意気込みを表しています。

予防から治療まで、内因性から外因性まで、選り好みすることなく、
「重症なすべてのこども達」が元気になれるよう、お手伝いができたらいいなと思って、日々仕事をしています。

2014年7月17日木曜日

ドクターヘリの説明書:シリーズ第2回 要請方法のバリエーション

多田です。

無事、第2回を迎えた「ドクターヘリの説明書」です。
第1回で終了してしまったと思っていた方、多いかもしれません。
ゆっくり、マイペースで回を重ねてきます。
第1回の「ドクターヘリの基本的な活動」についてはこちらです。
今回は、「要請方法のバリエーション」について、ご紹介させていただきます。

1.現着した救急隊からの要請
 もっとも基本的な要請方法です。
 119番通報を受け、現場に到着した救急隊が患者さんを診察し、その結果、緊急度・重症度が高いと判断し、ドクターヘリ要請する形です。
 救急救命士・救急隊員の方々の医学的な判断に基づく要請のため、重症で緊急度の高い患者さんに出動することが多いです。
(患者さん接触までに、しっかりとした情報が入ります)

2.救急要請された内容を元に、消防指令から現着前要請
 患者さんへの接触までの時間を短縮するために、劇的な効果を発揮する要請方法です。
 結果、軽症だったり、結果、緊急度が低かったりすることがありますが、本当に重症で、緊急度の高い患者さんを拾うためには「オーバートリアージ」の容認が必要です。
(崖から車が落ちて、中に人が閉じ込められていると聞いたら要請してください)
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3.救急搬送された病院から、「緊急外来搬送」要請
 広島県は北海道に次いで、無医地区が多い都道府県だそうです。特に、島嶼部や山間部の病院では、重症患者さんの対応が難しいことがあります。そういった患者さんが、近隣の病院へ救急車で来院された時に、「緊急外来搬送」という要請方法があります。
転院先の病院が決まってなくても、ドクターヘリのスタッフが救急外来等までお邪魔して、患者さんの治療や搬送を行います。
(いろんな病院に、お邪魔します)

(病院近隣のランデブーポイントです)

4.転院搬送の要請
 病院間搬送の要請です。
搬送先病院が決定していて、救急医が搬送に同行した方がいいと考えられる患者さんの場合、ドクターヘリでの転院搬送を行っています。
広島県の場合は、搬送元の病院から医師が同乗する場合には、原則として、消防・防災ヘリを使って転院搬送を行います。


(搬送先病院のヘリポートです)

(搭乗する医師がいれば、防災ヘリのことも)

以上が、自分が思いつく要請方法のバリエーションです。
空振りOKですので、なるべく早く、患者さんと接触できる方法で要請していただけると幸いです。
シリーズ第3回は、また忘れられたぐらいに投稿します。

2014年7月13日日曜日

「急ぐ」と、「慌てる」

多田です。

救急医療に携わっていると、「急ぐ」仕事が多いです。

病院前では、患者さんに治療開始を開始するのを「急ぎ」ます。
(「急ぐ」ために現場に行きます)

治療開始に当たり、点滴をとるのを「急ぎ」ます。
病院への搬送を「急ぎ」ます。
(「急ぐ」ためにヘリポートへ迎えに行きます)

病院へ着いたら、病態の把握・根本的治療開始を「急ぎ」ます。
(「急ぐ」ために救急車を出迎えます)

などなど、一連の診療がすべて「急ぐ」必要があります。
特に、救命救急センターに搬送される患者さんは、「急が」ないと、生命の危機や、後遺症の増悪が考えられる患者さん達です。
時間の短縮は、我々救命救急センターで働くスタッフ全員の共通した目標です。
そのため、当センターのキャッチコピーは、
「Turn Back Time」

です。(「Turn Back Time」についてはこちらや、こちらの記事をご覧ください。)

ただし、「急ぐ」ことが必要な場面ですが、「慌てる」とは似て非なる物だと思います。
病院前で患者さんへの接触を「急ぎ」すぎて、ヘリの機長に無理な要求をするとか、
患者さんの状態を把握できていないのに、なんとなく「急いで」治療方針を決めてしまうとか。これは、「慌てる」だと思います。

持論ですが、「急いで」いない時に、きちんとした仕事ができない人は、「急いだ」時には、「慌てる」ことしかできないと思います。
普段、もれなく確実な仕事ができる人が、その時間を短縮することが、いわゆる「急ぐ」ことだと思います。
「急いで」仕事をするにはどうしたらいいかを考えますが、自分の中での一つの答えは「急いでない時に精度の高い仕事をし、優先順位をつけること」だと思っています。
「急ぐ」時のために、「基本の徹底」を普段から準備しておくことが大事ですね。
(基本を勉強中)

「慌てる」ことと、「急ぐ」ことの違いを、研修医の先生達に伝えて行くことができればいいなと思っています。

2014年7月5日土曜日

今日の振り返り

多田です。

格納庫に格納されるドクターヘリをみると、いつも考えさせられます。
「今日の活動は適切だったのか?」

「要請内容に対するもっといい対応があったんじゃないか?」

「離陸前に準備する物品は他にあったんじゃないか?」

「現場に着く前に準備しておいた方がよかったことがあったんじゃないか?」

「現場にであれをした方がよかったんじゃないか?あれはしなくてもよかったんじゃないか?」
「病院への連絡は十分じゃなかったんじゃないか?」
「搬送先病院は他の病院の方がよかったんじゃないか?」

病院で勤務していれば、その後の治療や経過を自分の目で確認することができますし、治療の方向も修正することができます。

しかし、ヘリポート待機方式の広島県ドクターヘリは、勤務中は病院前専用スタッフとなります。
その分、出会った患者さんとの短い時間を有効に活用して、「一期一会」の精神で病院前医療を提供していかなければならないと思っています。