2015年3月11日水曜日

妄想出動シリーズ:第1回 脳血管障害疑い(前編)

多田です。

先日、ある出動を記事にしようとしていた時、あらたなシリーズを思いつきました。
名付けて「妄想出動シリーズ」です。
ドクターヘリが要請される救急事案には、重症外傷・ショック・脳血管障害・急性冠症候群などがあります。それぞれの事案について医療スタッフの目からみた「あるある」だったり「定番」だったりを知っていただくことで、ドクターヘリ事業への理解を深めていただけたらと思います。

ただし、シリーズの中身は、多田の独断と偏見での「あるある」ですので、ご了承ください。
「へー、こんなこと考えて、こんなことしてるんだー」程度でご理解いただければありがたいです。

早速、シリーズ第1回
「脳血管障害疑い」です。

------------------
ホットラインに入電です。
「60歳代男性、右半身が動かなくなった。E田島消防からの要請」
出動の準備をしながら、スタンダードな物品以外になにか追加で必要でないかを確認します。
出動物品をもったら、ヘリポートのドクターヘリまでダッシュ!!
(出動を急ぎます)

整備士さんのOKサインを確認し、ヘリの真横から機体に近づきます。
それぞれ、所定の座席に座り、4点式のシートベルトをし、ヘッドセットを装着します。
医療スタッフがそれぞれ、お互いのシートベルトと、左右のドアロックの確認をし、運行スタッフに確認OKなことを伝えます。
離陸の準備が済み、ヘリが「ふわっ」と離陸するころには、フライトナースはすでに点滴の準備を始めています。
(離陸まで約3分です)

広島へリポートの上空で、「ランデブーポイント」「支援隊・救急隊のコールサイン」「要請元消防」の連絡の後に、追加の患者さんの情報が入ります。
「64歳男性、自宅で会話中に突然倒れたため救急要請。右半身が動かない。救急隊現着前の要請です。」
無線で送られてきた内容から、患者さんの状態を想像します。
離陸直後に入ってくる患者さんの情報は、せいぜいこの程度です。
この限られた情報から、患者さんの状態を推測し、必要な処置・治療をあらかじめ想定します。

脳血管障害(脳梗塞や脳出血)を疑わせる症状です。
医療スタッフは、考えられる病態・病名を頭に思い浮かべながら、現地で行う処置や検査について、運航スタッフの会話を邪魔しないように、必要最低限の会話で意思疎通をはかります。
今回は脳血管障害を疑わせる患者さんですが、念のため血糖測定をし、低血糖は否定するつもりです。
ランデブーポイントへ向かって飛行し、着陸の支援をしてくださる支援隊の方と無線交信します。

安全確保ができれば、着陸します。着陸の際には、医療スタッフも飛散物や、線状障害物、危険な場所にいる人などがないかどうか確認します。

ランデブーポイントへ着陸の後、整備士さんがドアを開けてくれますので、そこから降機し救急車内で患者さんの診察をします。
当然、救急車までは医療資機材を入れたバックを背負ってダッシュです。

救急車内のストレッチャー上で、診療を開始します。
運ぶだけが目的ではないので、心電図モニター・SpO2モニター・血圧計はつけられたままで、救急隊員・救急救命士による観察が継続されております。
--------------------------------------
続きは後編でお楽しみください。

(一部の写真提供は、神戸の航空機好き女子のお二人です。ありがとうございます。)

0 件のコメント:

コメントを投稿